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男は私の「飼い主」
私は「買われて飼われるセックス人形」
どんな要望にでも応えられます。
時には娼婦のように
時には恥らう未通女のように
時には母の様に
今日の相手はどんな私をお望みかしらね?
男は私が欲しくないものばかりをくれる。
宝石とかお金とかブランド物とか車とか、いつもいらないものばかりくれる。
どんなにいらないといってもくれるので、いつの間にか車5台分の税金請求書がきてしまって驚いた事もあった。だって、20代や30代の女が乗るような車ではないし、私の好みも聞かずに押し付けてくるのだから、喜べというほうが無理だろう。
それに私は、14歳の時から水商売をして生計を立てていたので、自分の欲しいものや、生活に必要なものくらいは買えるだけの収入があった。もう、保護者に面倒を見てもらわなくても、経済的には何一つ困っていなかったのだから、不要なものだったのだ。
店のおねえさんやママに相談すると、『わぁ嬉しい!』って喜んであげることも仕事のうちよ、と言われたので、それ以降は言われたとおり、何を頂いても『わぁ嬉しい!』ということにした。おねえさんたちのいうとおり、そういうとほんとに男は喜んで、ますます不要なお金やモノをくれるので、困り果てた。
車は、当時弟の友達で借金に苦しんでいたホストの男の子にあげた。
あとはめんどくさいので、ディーラーに売り飛ばし、現金にした。
私にちょっかいを出してくる男は、精神的にサディスティックな男が多かったのは何故だろう?
女王様もやらされるけど、最後には男は私の苦しそうな顔や泣きそうな顔で興奮する。
何かそういう男をひきつけるものがあったのだろうか?
水商売をしていた若い頃知り合ったお客さんで面白い人がいた。
当時私は20代前半、その人は40代なかばだった。
「一度でいいから柚葉が他の男に抱かれているところを見たい」
その人は精神的な不能から、肉体もインポテンツになってしまった人だった。
気前よくお金を使ってくれて、良い客として店に通ってくれて、美味しいものをたくさん知っていて、社会的地位のある職業にも就いており、紳士で優しい上等な部類の男だった。
私は求められれば誰にでも身体を開く女なので、求められればいつでも応えるつもりでいたが、その人は決して私を抱こうとはしなかった。ホテルに行ったことは何度もあったが、私がシャワーを浴びるところを見て、私の身体にキスをして、興奮はしているのだけど、どうしてもセックスができないのだと言っていた。
数年前から、誰を相手にしてもだめだったそうだ。
そしてそのことを真剣に悩んでいた。
「信用の出来る男、痛いことをしない男を用意してくれるなら私はいいよ」
というと、その人は目を真ん丸くして驚いていた。が、喜んでくれたようだ。
一ヵ月後、【身元は明かさない】という男を見つけてつれてきた。
県外の、有名ホテルのスイートルームへ連れて行かれた。
女の扱いに慣れているな・・とすぐに解る優しげな男と、ルームサービスで食事をとり、お客さんが見ている前で私は何度も何度もその男に抱かれ、くたくたになった。
私は私を可愛がってくれるお客さんの言う事ならなるべく応えてあげたい、ただそれだけだったのに、そのお客さんは帰り際、私のバッグに数百万の札束をねじ込んでいった。
地方都市で水商売をしていたら、どんなに頑張ったって月収50万程度が精一杯だ。
その私に数百万・・・バカじゃねえの?と思った。
私は、あまり貯金をしたりすることがなかった。お金はいつも、冷蔵庫の中とか、クローゼットの毛皮のコートの内ポケットの中など、適当に無造作に突っ込んでおいて、必要なときに必要な分だけ取り出し、財布に入れて持ち歩いていた。
銀行員のお客さんが店に来て頼まれれば、家に呼んであちこちに隠してある(というか突っ込んである)現金をかき集めてきて定期にしたりして協力した。だって、私を可愛がってくれるお客さんは大事な「飼い主」だから。
保険屋さんがお客さんだったら、保険に入る。
3年前まで私は、死亡保険金の合計が2億4千万分もの保険に入っていた。
アホだ。
私が他の男に抱かれるところを一度でいいから見たい、と言ったお客さんは、とても喜んでくれたが、その後店に来なくなった。しばらくして、自殺したのだと、新聞で読んだ。
その人は死んでしまったのに、そのときから私の昔からある銀行の口座には、毎月20万が振り込まれている。
誰がしているのか、なんなのか、よく解らないので怖くて一切手をつけていない。
20万が振り込まれるようになって、もう十数年が経つ。
遠い県外に越してしまった今は、その通帳を一年に一度しか見ないけど、見るとその人を思い出すのだ。
その人は、私を抱きたかったわけではなかったんだろう。
どんな方法でもいいから、自分が男であることを確認したかったのだろうか?
もう今となっては全てが謎だけど、思い出すとほんのり切なくなる。